オランダの芸術家テオ・ヤンセン氏の展示会に行ってきました!!
テオ・ヤンセン氏は物理学と芸術を組み合わせた風の力を利用して動くストランドビースト作品を数多く世に送り出してこられた方です。
今回は大阪南港ATCホールで開催された展示会の様子や感想、テオ・ヤンセン氏の経歴などをお伝えします。
テオ・ヤンセン氏とは
テオ・ヤンセン氏(1948年~現在)はオランダのロッテルダムにほど近いハーグという町の郊外、スヘフェニンゲン出身の芸術家です。
現在74歳のヤンセン氏はもともと大学で物理を学んでいましたが、27歳のときに画家に転身されました。
その後、物理と工作を組み合わせた風を動力として動く物体「ストランド・ビースト」の製作を開始しました。

「ストランド・ビースト」とはオランダ語で砂浜の生命体という意味です。
ヤンセン氏は自らの手で命ある生き物を作りたいという強い意志を持っていたため、自分がいなくなっても動けるように風をストランド・ビーストの動力源としました。
生命に強い思い入れがあったヤンセン氏は実際の生物のように、自身の作品にもラテン語にちなんだ名前を付けており、これはストランド・ビーストの製作開始時から全くブレていません。
最初は風車の動力を利用して横に「歩行」するだけだったストランド・ビーストも「水の感知」や「空気の貯蔵」、「方向転換」、「尻尾を振る」、「ハンマーを打つ」という動作を習得しています。
これらの機能に機械が一切使われていないことは衝撃です。
ヤンセン氏はこれらをプラスチックチューブ(塩ビ管)、ウレタンチューブ、結束バンド、2Lのペットボトルのたった4種類の材料から作っています。

しかし、たった4種類しかない分、使っている素材へのこだわりは異常に強く、使っているプラスチックチューブの色が変わることが判明した際には、50㎞分のチューブを買い占めたのだとか(どこに置いていたんでしょうか??笑)
テオ・ヤンセン展ではヤンセン氏の経歴から「ストランド・ビースト」製作の試行錯誤の跡までを細かく展示してありました。
展示場のスペースとしては少し大きめのスーパーくらいで、展示品数もそこまで多いわけではなかったですが、ヤンセン氏のこだわりが強く見える一つひとつの展示品はどれも新鮮味があり、僕と友人は3時間半近く滞在しました。
行く前に覚えよう!「ホーリー・ナンバー」

作品を見る上で大切な説明の一つにホーリー・ナンバーという数があります。
これはビーストの脚の長さと回転軸からの距離のことを指す13個の数字の比のことで、この数字を基に足を作ると勾玉状の軌跡を描いて脚が動きます。
この「ホーリー・ナンバーを使用した脚」はビーストの製作の鍵となっており、数々の説明に登場します。
ただ動くだけの脚であればそこまで苦労はなかったかもしれませんが、ヤンセン氏は生き物を作ることにとても強い想いを持っていました。
なので、あくまで生き物のように動く脚にこだわりをもって、パーツや回転軸からの距離の研究を重ねて、ホーリー・ナンバーを見つけ出し、ビーストの脚を動物のように動かすことに成功しました。

「ホーリー・ナンバーによる脚」はビーストのいくつかある動き方の中でも特に重要なものです。
展示の中では1回しか説明されていませんが、頭の中に叩き込みましょう!!
会場の様子
ここからは会場の様子を紹介します。

エントランス。早速作品を見ることができます。

作品の説明があります。これは初期の作品です。
名前がラテン語調、大きさも「体長」と表され、さらには地層時代のように作品の時期による分類もジュラ紀や白亜紀のように「タピデューム期」と表されています。
まるで生き物図鑑です。
このようなビーストが10作品以上。その他、製作の歴史、作品の設計図等が展示されています。

多少順番が前後するかもしれませんが、これらのビーストの動作の説明は他の展示を見る前に済ませておきましょう。ホーリー・ナンバーの説明もここにあります。
ヤンセン氏の発想を簡単に理解できます。

自分の手で動かす体験もできます。
実際に動かしてみると分かるのですが、思っているより前後左右に揺れて壊さないか心配になりました(笑)。

およそ1時間に1回ビーストを動かしてくれます。これは全長12mもあり、左右に動くことができます。
これだけ大きなものが人間の手を使わずに動いているのは衝撃ですし、迫力満点です。
このビーストは「アニマリス・オムニア・セグンダ」と言い、ヤンセン氏がビーストに与えた五つの動作(歩行・水感知・空気圧縮・尻尾振り・杭打ち固定)をすべてこなすことができます。

設計図やスケッチも展示されていて、一部は販売もされています。

こんな絵が飾ってあったらおしゃれですね。
まとめ 壮大な工作展
ここまで、テオ・ヤンセン展の概要をまとめてきました。
生命を作ることに強いこだわりを持つ物理と芸術に秀でたおじちゃんの作品集です(笑)。
小学生の夏休みの工作展のレベルを極限まで高めたような雰囲気を感じました。
「好きなものに一生懸命取り組め。いつか必ず形になる何かができる」というような言葉はよく聞きますが、テオ・ヤンセン氏はまさにその言葉を体現した人物だと感じました。
もともと機械いじりや工作が好きだったとは思いますが、砂浜で一人黙々とプラスチックチューブと帆を組み合わせたビーストを作成している間には変な目で見られたこともあると思います。
「そんなことは辞めて、まともな仕事をしてくれ」と言われたこともあるでしょう。
ですが、ヤンセン氏はロマンを追い求め続け、遂にストランド・ビーストを作り上げました。
ヤンセン氏の作品が評価され始めたのは40歳ごろだそうです。
完全な遅咲きですが、今や世界中で展覧会を開き、NASAとも仕事をしているヤンセン氏。
何事も諦めなければ上手くいくということではないですが、自分が熱中できることに夢中で取り組むことの素晴らしさを感じた展覧会でした。
僕も自分が打ち込めることに必死で取り組んでいきたいと思います!!
以上!最後まで読んで下さってありがとうございました!!!!!