自称「海外中級者」の僕でしたが、インドの大理石店で綺麗にコースター買わされてしまいました(笑)。
僕も粘って「基本的に値切りはしない」という店員から33%の値引きはしたんですけどね(笑)。
元値4000円の螺鈿細工の大理石のコースターを2800円で3個買いました。
ただ、その大理石のお土産の「買わせ方」が非常に巧みだったので今回ご紹介したいと思います。
注意喚起としてはもちろんですが、エピソードとしても楽しんで頂ければ幸いです。
では早速参りましょう!
入店から購入までの一部始終

最初に言っておきたいのが、これはタージマハルへ向かう現地のツアーの参加中の出来事で、コンダクターに大理石屋に連れていかれたということです。
なので、ツアーに申し込むときはお土産屋に注意してください。
というかツアーを使わないことを強く勧めます。
紅茶をご馳走してくれるツアーコンダクター

ご馳走になったなったストリートのチャイ。今考えればこのチャイ屋もグルだったかもしれない…。
僕たちがタージマハルからホテルに帰っている途中、なぜかコンダクターがタクシーに合流してきて、チャイ(紅茶)をご馳走してくれました。
その時点で怪しい臭いがしていて、本当に嫌でした。
そして「大理石のお土産屋があるから見て行ってほしい」と言われました。
「大理石なんか絶対高いし、要らねぇ」と思いながらも、その場の友人2人とコンダクターの空気感もあり行くことに…。
入店してさらに丁重にもてなされる

薄暗い店内には所狭しと並べられた大理石の机や椅子、こちらを見てくる4~5人のインド人。
「やばいところに来ちゃった」と一瞬で出たくなりました。
そうすると、ソファに座らされ、扱っている大理石がいかに優れているかを説明し始めました。
そして、もう1杯のチャイを出されて店を出づらい雰囲気に…。
一通り説明が終わったところで、僕は「はい!よく分かったんで!じゃあ!」と店を出ようとしましたが、「いやいやいやいや!」と店員が出口をブロック。
あっちでオーナーが話があるから聞けと促されました。
その道20~30年のオーナーが現る
ソファからカウンターに移されると、さっきは遠巻きに僕たちを見ていたインド人男性が上手な日本語でセールストークを始めるではありませんか!
その人は大理石加工場のオーナーで、日本人と結婚したとのことで日本語が達者でした(日本語が上手い外国人に注意するのは海外旅行の鉄則なんですが…)。
そして、なんと世田谷区の三軒茶屋駅から徒歩5分のところに家があるらしいです(本当と思えるくらい東京のことに詳しかったです)。
オーナーはその店の大理石細工は世界遺産のタージマハルの装飾と同じ方法で加工していると教えてくれました。
その人はフェイクの見破り方や使っているの素材の良さをなどを懇切丁寧に説明してくれました。
この街でしか手に入らないと推される
その宝石店はインドの北部、タージマハルで有名なアグラという街にありました。
アグラは大理石細工が特産らしく、加工場がいくつもあるそうです。
オーナー曰く、「この大理石細工はアグラでしか手に入らない」とのこと。
それまでの2日間で、インドのお土産物屋の少なさに絶望していた僕は「多分それは真実だろう」と思いました。

どれが気に入ったかを言わされる
カウンターで僕たちは大理石のコースターと小物入れの説明を10分くらい受けたでしょうか。
どれが気に入ったかを言わされました。
小物入れもコースターも数種類あり、見たところ明らかな粗悪品という感じはしません。
コースターは松竹梅の3段階の価格帯のものがありました。
僕は気に入ったコースター(竹)を指さしました。

お値段発表
「デモ大理石ナンカ、高イト思ウデショ?イクラダト思ウ?1万円?2万円?」
オーナーが一番肝心な情報を発表しようとしています。
このとき友人がいくらと答えたかは忘れましたが、1万円くらいだった気がします。
僕は3000円くらいと言いました。
「正解ハ4000円クライネ」
大理石のコースター(竹)1枚4000円…。
僕は思いました。「なるほど。買えなくはない絶妙な値段」
ちなみにコースター(梅)は約2400円で、コースター(松)はおそらく8000円くらいだったと思います。

友人が購入を決意
店員は大理石細工の強度に自信があるのか、商品を床に落としてもまったく焦っていません。
そして、相場こそ分からないものの確かに綺麗です。
すると、友人は誕生石のターコイズを使った小物入れが気に入ったらしく、「これ買って帰ろうかな」と言い始めました。
小物入れはコースター(竹)と同じ約4000円で、そのとき僕は友人の判断を尊重していました。

それに釣られるように、もう一人の友人もコースター(梅)を買って帰ると言い始めました。
別にこれも問題ではありません。
気に入ったのなら買えばいいのですから。
でも、当然店員は僕にも聞いてきます。
「お前はどうする?」
僕も買って帰ってもいいかと思い始める
ここで僕はいつも遊ぶ友人3人からのお土産のリクエストが頭によぎりました。
彼らはいつも海外に行くと「非消耗品でかつ実用的、そして行った国を感じられるお土産」をリクエストされます。
まぁ、選ぶのは大変ですが、毎回喜んで使ってくれるので丁寧に選んでいます。
なので、その友人に買って帰ってもいいと思い始めました。
僕が普段家で使っているの木のコースターが1枚550円でした。

その木のコースターよりは高そうだったので、買ってもいいかなと思いましたが…
やっぱり1枚4000円は高い!
僕は店員に言いました。「高いから、買わない!」
インド人3人に囲まれ、値切り交渉のゴング
すると、インド人店員に囲まれ、英語でまくしたてられました。
「気に入ってんだろ!なら買えよ!」
日本人が舐められてはいけないので、僕も応戦します!
「高いつってんだろ!!」
店員も譲りません。
「ここでしか買えないんだぞ!」
「だからなんやねん!」
すると店員が折れ、「普段は値引きなんかしないが、お前は特別に(コースター竹・2500ルピーを)2000ルピーにしてやる」
意外と早く店員が折れてくれたので、僕としてはまだ値切れると思いました。
「1500なら買う」
「それは無理。マジで」
「分かった、じゃあ1800な」
ここまで値切って買わないのは無理なので、買うことになりました。
最後は3人で僕を囲む完全なパワープレーでしたが、僕にも大理石のコースター(竹)を買わせました。

ただ、まだ終わりません。
粘りの交渉でさらに値切る
先ほど、友人が3人いるという話をしましたが、僕としたらこの際3つ買って帰ろうと思いました。
僕が仕掛けます。
「2個で3500ルピーにしてくれるなら、もう1個買う」
「う~ん。まぁ、オッケー」
さらに仕掛けました。
「3個で5000ルピーにしてくれたら、あともう1個買うわ」
そう言うやいなや、オーナーが僕を睨みつけて「DONE!(もう終わりだ!)」と叫びました。
結局僕はコースター(竹)を3つで計5000ルピー(8400円)で買いました。

僕としてはコースター1個分の値段を値切りましたが、店を出てから「コースターに8000円か…」とぼったくられたことを理解しました。
友人と3人で普段はしない高い買い物を急にした疲労感でグッタリした帰り道をよく覚えています。

心理学のトリックを解説
さて、皆さんはこの一連のやり取りの中で心理学のトリックがいくつ発動していたかお気づきになったでしょうか?
このトリックを知っておくことで、海外旅行だけに関わらず日本でもあらゆるシーンに応用できます。
是非ここからが面白いので読んでみてください!
チャイ(紅茶)を奢った理由

スーパーなんかで試食させてもらったウインナーを、どこか申し訳なく思って買った経験はないでしょうか?
この貰ったものに対して、お返しをしないといけないように感じることを「返報性の法則」といいます。
「タダより高い物はない」と言われますが、実際に人間は何かプレゼントを貰うと、強烈に「何かお返しをしなければいけない」と思うようにプログラムされています。
この「返報性の法則」はかなり強力で、自分の意図に反して贈られたものであろうと、僕たちは何かお返しをしないといけないと思ってしまいます。
なので、チャイや丁重なもてなしは僕たちにプレッシャーを与える最初の一手だったのです。
なぜオーナーが経歴や自宅の位置を明らかにしたか

これはオーナーが自分の話を僕たちにより信じやすくさせるために使ったテクニックです。
人は深く考えることを面倒くさがります。
でも、嘘をつく人がいることも知っています。
その時に信用していい人か見分けるのに必要なのが相手の「専門性」です。
下宿生活2年目の大学生と中華料理店勤務20年の料理人。
どちらにチャーハンの作り方を教えてほしいと思うでしょうか?
当然、料理人ですよね。
これと同様に僕たちはプロの意見に滅法弱いのです。
店員がわざわざ自分がオーナーだと自己紹介し、世田谷に住んでいるとかそういうことを言ったのはこちらに反論をさせずらくするためだったのです。
これは心理学の用語で「権威付け」と呼ばれるテクニックです。
気に入った商品を選ばさせる理由

突然ですが、いつも言うことが違う人を信用できるでしょうか?
言動が一貫しない人は信用しにくいですよね。
逆に言えば言動に「一貫性」があれば、その人は信頼できるということでもあります。
ということは、人は自分の言動が矛盾することに違和感を覚え、一貫性のある人だと思ってもらえたほうが信用を得やすいのです。
そして、その本能を巧みに使ったシーンが「お気に入りの商品を選ばせた」シーンです。
無理矢理にでもお気に入りを選ばせると、「買わない」と言ったときに強烈な矛盾を生みます。
「気に入っているのに買わない」というツッコミどころを与えてしまうからです。
なので、わざわざお気に入りの商品を選ばせたのです。
このように、人が無意識のうちに言動に一貫性を持たせようとすることを「一貫性の法則」といいます。
4000円を安いと錯覚させるテクニック

日本人からしてもコースター1枚4000円はなかなかの値段です。
でも、オーナーは「大理石だし、1万とか2万とかだと思うでしょ?」と聞いてきました。
そこで出された1万円とか2万円とかっていう数字に引っ張られると、4000円という値段を聞いたときに安く感じます。
この最初の数値(基準)をあえて高く設定して値段を安く見せることをアンカリングといいます。
僕はオーナーがアンカリングを使ってくるのが分かったので、オーナーの思惑の外す3000円と値段を予想したのです。
ここでしか手に入らないことをアピール

人間はレアなものには価値があると思ってしまいます。
限定のスニーカーやカードが異常な値上がりをするのを見たことがあると思います。
「ここでしか手に入らない」とか「あなただけ」という言葉には少し魅力を感じてしまいます。
こうしたレアなものを追い求めてしまう習性を「希少性の法則」といいます。
僕もこの街以外ではコースターを買うのは難しいと判断したので、結果的には買いました。
心理学のトリックに気づきながらも最後は力負け

こうして解説ができるくらいに僕にはある程度の心理学の知識がありましたが、最後は3~4人で僕を囲むパワープレーと多少の値下げで勝負ありでした。
最終的には1個分(4000円)を値切り、オーナーに「お前商売うまいな」と褒められましたが、相場よりはかなり高い値段だったに違いありません。
粗悪品でこそないですが、8000円はなかなかの授業料だったと思います。
ただ、後に出会ったインド人ガイドの話によると、5万~何十万をぼったくられた人もいるそう…。
インドではボッタクリが横行しているので本当に注意してください。
まとめ トラブルは解決するより回避しよう

心理学のトリックに気づくことと最終的に「断りきれるか」は別です。
オレオレ詐欺の電話に乗ってみてトラブルに巻き込まれてしまった人のように、途中で引き返せなくなることもあります。
自分ではコントロールしきれないその場の空気感などが絡んでくると事態はより厄介になります。
僕も回避はしきれず、納得の行かない買い物をすることになりました。
ぼったくろうとしてくる人に今後の人生で関わることはありません。
厄介なことに巻き込まれそうになったらできるだけ早く退散してください。
かのアインシュタインもこう言っています。
「賢い人は問題を解決するが、賢明な人は問題をあらかじめ避けるものだ」
そもそも問題を起こさないことこそが重要なんですね。
この経験でよく学びました。
みなさんのトラブルの少ない旅を祈っています!
以上!最後まで読んで下さってありがとうございました!!!!!