【地政学】世界の覇権を握るのに必要な場所

近年、耳することが多くなった地政学という学問。どんな学問で僕たちの生活にどのように結びついているのか概要を説明したいと思います。

「地理」で「政治」を説明する学問

地政学とは簡単に言えば、「地理」で「政治」を説明する学問です。

地政学は戦争をきっかけに生まれた学問で、1800年代後半にプロイセン(現在のドイツ)で生まれました。このときプロイセンはフランスと戦争をしていたのですが、そのときにどこを攻め落とせば効率的に戦争を終わらせられるかを考えていました。

そこで重要になったのが地図です。ここを通るしかないという交通の要衝を抑えれば、物流を遮断して相手を苦しめることができます。

こうした地図に基づく戦略は古代からありましたが、それを初めて実地での戦争に使ったのがプロイセンでした。そしてプロイセンはフランスにとって重要なポイントを見事に攻め落として勝利しました。

以降、戦争や外交で役立つ場所を分析する機運が高まり、各国にとっての急所となる場所を研究する地政学が注目されるようになりました。また地政学を用いれば、「この国は次にこう動いて来るだろう」という予測も立てやすくなります。

相手の弱みを握れば交渉では必ず優位に立てます。いつもどこかの国の顔色を窺いながら生きるなんて嫌ですよね? できれば周りが自分に合わせてくれる方が楽なので、いくつもの国が世界の主導権をめぐる争いをしているのです。今は中国とアメリカが争っていますね。

では、今の世界ではどのポイントを抑えれば国際社会で優位に立てるのでしょうか? 答えは海にあります。

「海」を制する国が世界を制す

世界を制するのに必要なのは陸でも空でもなく「海」です!

それは今なお海運が国際物流の9割を担っているからです。海の輸送をシャットアウトされれば、いくら自国で頑張ろうと思っていても無理があります。食料も燃料も入って来なければ、製品を作っても売ることができないからです。

つまり、海での影響力を強固にすれば世界中の国に対して強気でいられるということです。そして今、この海の覇権を握り、世界の中心となっている国がアメリカです。

それにしても、地球の7割を占める海を支配するのは難しいと思いませんか?太平洋なんて広すぎて管理するのは明らかに無理そうです。

そこで大切なのが「効率良く支配できるポイント」です。無限に広がっていそうな海でも、どの国にとっても急所となるようなポイントがあるのです。

海の支配に必要な「チョークポイント」

チョークポイントととは、海上交通で必ず通らないといけないポイントのことを言います。具体的には海峡や運河などのそこを通るしかない場所や、燃料補給のために船を止めざるを得ない港のことを言います。

そして、このチョークポイントは世界の広い海の中に10個ほどしかないと言われているのです!!!

図.世界のチョークポイント。1.イギリス海峡 2.ジブラルタル海峡 3.ボスポラス海峡 4.スエズ運河 5.バブ-エル-マンデル海峡 6.ホルムズ海峡 7.喜望峰 8.マラッカ海峡 9.台湾海峡 10.バシー海峡 11.ロンボク海峡 12.パナマ運河 13.マゼラン海峡

チョークポイントの数が少ない理由は、航海に適した水深や海流、運搬コスト、国際法などでルートが限られてくるからです。一見無限に広がる海でも、ここを通るしかないというポイントがあるんですね。

ルートを支配されることは致命的な弱みになります。敵国にチョークポイントを支配されると船の航行の禁止や法外な通行料などで絶大な影響力を持たれることになります。

なのでチョークポイントを取ることが地球という盤面で見たときに、絶対に抑えなければならない場所なのです。

そして今アメリカがそのチョークポイントを世界で一番コントロールしているので、世界の覇権国となっているのです。

ランドパワーとシーパワー

なんだかよく分からない言葉だと思いますが、地政学では国を陸型と海型の2種類に分けます。これが陸型の勢力(ランドパワー)と海型の勢力(シーパワー)と呼ばれるのです。

ランドパワーとシーパワーとは具体的にはこんな国々です。

ランドパワー → ユーラシア大陸の内陸部にある国(中国、ロシア、フランスなど)
         敵国に攻め入りやすいが、攻められもしやすい。

シーパワー → 周りの多くを海で囲まれた海洋国家(日本、アメリカ、イギリスなど)
        敵国に攻められにくいが、攻めるのも大変

ランドパワーの国は常に外の国から攻め込まれてきたという歴史があります。そのため、ひとたび自分が力をが得ると周りの国に攻められる前に攻めるということを繰り返してきました。

シーパワーの国は攻め込まれもしない分、侵略もあまりできません。ただ、陸上戦が苦手なのでランドパワー国家に侵略を試みたときには返り討ちに合ってきました。

時代によって主役は違いますが、領地を広げようとするランドパワー国家をシーパワー国家が抑え込むという構図で世界は成り立ってきました。

そして、これからもそうなるでしょう。では、なぜランドパワーの国は海の方へ出たがるのでしょうか???

それには大陸内部の気候が関わってきます。

ハートランドとリムランド

これも地政学の専門用語ですが、ハートランドとはユーラシア大陸の内陸部の地域のことを指し、リムランドとはユーラシア大陸の沿岸の地域のことを指します。ハートは心臓、リムは縁という意味です。

極寒な上に土地も痩せているハートランドに対し、温暖で湿潤な気候であるリムランドには豊かな都市が栄えている。

ハートランドは住めた土地じゃないから

住んでいる人には失礼ですが、ハートランドは生きていくのにはあまりに過酷な環境です。雨も少なければ冬は氷点下を切るのは当たり前。作物も育てられないそんな極寒の地に誰が住みたいというのでしょう。

ハートランドのモンゴルでは冬場、路上で寝落ちた酔っ払いが朝になって凍死しているということが頻繁にあるそうです。東京でそんな話は聞いたことがありませんね(^^;)。

寒すぎるハートランドに住む人は常に温暖なリムランドに出たくて仕方ないのです。だからこそハートランドの国はリムランドに侵攻してきたのです!

世界の歴史ではハートランドの国がリムランドへの侵攻を繰り返し、両者がせめぎ合ってきました。図で表すと下のようなものになります。

この図をよく見てみると、歴史的に国際的な紛争はこのリムランド地域で起こっていることが分かります。ヨーロッパや中東、アジアは常に国々が争い合ってきました。

そしてこのヨーロッパ、中東、アジアは世界の三大紛争エリアと呼ばれています。

侵攻や防衛には拠点が大切

安定的に物資を軍に供給するためには拠点が不可欠です。戦争を始めてから拠点を作るより、前から作っておいて、そこを軸に作戦を展開をしていく方が賢いですよね。

そんな理由で、世界の大国は各地に拠点となる基地や領土を持っています。例えば、アメリカの沖縄基地は中国や北朝鮮などの監視が主な役割です。

もしアジアで問題が起きた場合、沖縄に基地がなかったらアメリカは本土から軍を送り込む必要がありますが、それでは緊急事態に対応できません。

だからこそ、いざという時に軍事作戦の拠点となる場所を各国は用意しているのです。そして基地は戦闘能力を持っていて初めて機能するので、近くに他国の基地があるとそこを拠点に攻撃を受ける可能性もあります。

アメリカの海外の軍事拠点は世界中に500以上あると言われています。

自分が身動きを取りづらいだけでなく、下手をしたら攻撃されかねないアメリカの海外基地。中国やロシアからすると非常に嫌な存在です。

どこの国も覇権を握りたい。近隣の国との立場の違いを明確にして言うことを聞かせたいと思っています。チョークポイントを脅かし、軍隊を近くに置いておくことで周りの国に影響力を持たせています。

まとめ いかに拠点とルートを押さえるか

このような海運上の拠点やルートをいかに効率よく支配するかということに注目して各国の動きを研究するのが地政学です。一見理解できない行動も、わがまま極まりない侵略もその裏には為政者の意図があります。

政治は頭の良い人が国のため(自分のため?)にやることが多いので、見栄を張るだけのために戦争を起こすことはほぼゼロです。

ロシアのウクライナ侵攻にはどんな意味があるんだろうか?中国が南シナ海に国際社会の反対を押し切って侵略するのはなぜなのか?

そんなニュースでサッと見るだけでは分からない各国がこだわる場所の重要性を想像できるようになります。

ルキータ

神戸市出身のサッカー・旅行・読書が好きな社会人1年目です!
日本で生まれ育ちながらも、DMM英会話1000回以上の授業と2回の短期留学を経て、独学でTOEICを450→905点にアップ。
サッカーの推しクラブはレアル・マドリードです!旅行では11か国を訪れました。読書はビジネス書を中心に一年で50冊ほどの本を読んでいます。

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